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スタッフブログ

GDPRと歴史と権力の話 [ 2018年06月22日 ]

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昔よくあった(今でもあるかもしれませんが)B級SF映画には
 国家が力を失い、企業が人々を支配する近未来世界
を描いたものがいくつもありました。

選挙で選ばれた政治家が統治するのではなく、
投資家(富裕株主)が選んだ巨大多国籍企業の役員が統治する。
そして警察や軍隊も企業がスポンサーとなり、企業の命令で動く。

その支配が「誰を向いて」行われるかを考えれば、それらの映画が何を警告しているのかは明らかですね。

さて、これらの映画などを作ったクリエイター達が危惧する世界ですが、21世紀も始まってしばらく経つ現在、まだまだ空想の産物...ですかね。
某超大国の大統領は商人ですし、某極東の島国の選挙は「報道機関」と呼ばれる「私企業」の思惑に左右されています。

ですが、そういった「考えようによっては...」という話ではなく、本当に企業が人々を支配する流れがあると危惧している人も居るのかもしれません。

欧州連合(EU)が導入した「GDPR」。

ネットで仕事をしている人々であれば、一度は耳にした単語ですね。
日本語では「一般データ保護規則」とか言うようですが、話題になったのはその制裁金の大きさですね。
大企業でも大損害ですが、中小企業であれば会社の消滅は避けられず、その役員は皆自己破産確実な金額です。

そして速攻でグーグルやアマゾンなどネットの世界で支配的立ち位置の数社が告訴されたようです。

このGDPRについては未来への希望ととらえる人も居るようです。

グーグルの支配が終わる GDPRで変わる世界
http://ascii.jp/elem/000/001/692/1692742/

一部の「自称コンピュータ通」の人々がアンチMSの闘士として正義の味方気取りでマイクロソフトを叩いていたら、気が付いたら世界はグーグルの支配下に落ちていた。
...かどうかは判りませんが、多くの企業はグーグルに睨まれれば、消滅の憂き目を見ると言うのも決して誇張ではありません。
検索結果から排除されれば、ネット世界では「存在しない」事になり、21世紀の現代において、「ネット世界に存在しない企業」は人々からは「リアルにも存在しない」と思われる訳ですから。
そういう意味では「グーグルは世界を支配している/しようとしている」と言っても、「その通りだ」と思う人は少なくないのかもしれません。

そしてその支配力は個人にも伸びてきているのかもしれません。

そう考えると、GDPRの登場はその流れに「待ったをかける」きっかけになると期待する人が現れるのも無理のない事でしょう。

ですが
 「普通選挙制度があれば、素晴らしい政治家だけが当選するから政治は良くなる」
とはならないのは皆さんもご承知の通り。
皆が「ダメだろコイツ」と思う人でも、「地元の支持」や「選挙制度のワザ(比例名簿順位1位)」なんかで、普通に当選するのです。

GDPRから始まるであろう流れによって
 「企業ではなく個人がデータを公開する範囲を決める権利を持つ」
と言っても、一部の「IT通」の人を除けば、
 「すべての項目はデフォルト設定のまま」
になるのがオチ。

様々な業界で「読めないような小さな字がびっしり書かれた『規約』をちゃんと読んでる人はいない」は常識となっています。
皆さんも色々なサービスの申し込みで
 「規約に同意して申し込む」ボタンを押すときに、規約を全文読んで、発生し得る様々なケースについて考察し、ボタンを押す前に何時間もかけて大丈夫かどうか検証する。
なんて事はしないでしょう。

結局は「サービス提供側」の思惑通りに事が運ぶでしょう。
その現実の前には、たとえ法規制があっても「ちゃんと了解を取りました」の一言でおしまいです。

GDPRを参考に各国も似たような法律を作るのかもしれません。
それらが「主権国家の最後のあがき」になるのか、「暗黒時代を阻止した光」になるのか。
徳川家でいえば「慶喜(幕府滅亡・徳川家の権力維持も失敗)」なのか「吉宗(中興の祖)」なのか。
同じ「よし」でも結果は随分違ったりしますね。

その昔、
 中国では「鄧小平の背は低い」と言うと、その人は翌日には巷から姿を消す
なんてジョークがありましたが、
 ネット上でグーグル先生を悪く言ったら、その人は翌日には巷から姿を消す
なんてジョークが言われるようになる日も遠くないのかもしれません。
それが単なるジョークで現実に起きる現象でなければ良いのですがね。

■余談
GDPRにはもうひとつの側面があります。
それは、その規定する条件をきちんと満たすことができるのは多大なコスト負担に耐えられる大企業だけ。という点です。
GDPRの施行に合わせて、アメリカ(当然EUから見れば「域外」)のいくつもの企業が「EU圏内の人はサービスを利用できません」という対策を取りました。
IPアドレスを調べて、サイトへのEUからのアクセスを遮断した所もあるようです。
こうなると、本文で紹介したリンク先の執筆者の方の予想とは逆に、サービスの寡占化を進める=グーグルやアマゾン、フェイスブックによる支配を助ける。
という効果をもたらす可能性があります。

そもそも、本当に「グーグルやアマゾン、フェイスブック」といった「アメリカ企業」にとって問題となるような代物であったなら、「アメリカファースト!」のあの方が黙っているとは思えませんよね。
他の事に気を取られて放置しているだけかもしれませんが。

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古代ローマ、王制を打倒して共和制を続けていましたが、国が大きく複雑化するにつれ、元老院(議会)はその責を全うできなくなります。
やがて遠征で成果を上げた軍人が民衆の支持を集めます。
軍人の政治権力が強まる流れの中、カエサルの暗殺事件が起きました。
GDPRは流れを止めようとしたブルータスでしょうか。それとも流れを決定づけたルキウスでしょうか。
結局ローマは帝政に移行し、共和制は終わりを告げます。

中世ヨーロッパ、ローマ教皇は最高権力者として君臨していました。
ですが、各国の中央集権化が進むにつれ、世俗君主である王の権力がローマ教皇の権力を脅かします。
さらにペスト(黒死病)の流行など、人々を救ってくれない神の権威が低下すると共にローマ教皇の権力も低下していきます。
そしてある日人々が気が付いた時、最高権力者の地位は各国の王に移動していたのです。

江戸幕府、後半には武士の力は減る一方、商人はどんどん力をつけていきました。
歳入が減り、財政難にあえぐ幕府や諸藩、儲けを増やし、力を増す商人。
しきたりや規制で動きの鈍い武家、効率重視で実力主義の商売人達。
黒船が来なくても、数十年後には徳川将軍家は大商人の傀儡になっていたかもしれません。
実際はその前に明治維新が起きて、権力が商人の手に渡る事は無かったわけですが。

いつの時代も、現在の権力者が力を失う中、次世代の権力者が民衆の支持を集めています。
そして権力の交代は革命のような劇的な事例よりも、「いつのまにか」交代している事のほうが多いのです。
それは以前の権力者は名目上の権力を維持し、新しい権力者はその枠の中で実質的な権力を手にするためです。
やがて、状況に慣れ、誰も不思議に思わなくなったころ、名目上の権力も新しい権力者に移るわけです。

そして現代。
各国は財政難にあえぎ、多国籍企業は儲けを拡大する一方です。
民主主義は衆愚制と化して身動きが取れず、巨大企業のリーダーは成功者として尊敬を集める。
彼らは変化の速いITビジネスの世界でAIの助けを借り、ライバルとの競争を制してそのまま世界の支配者への道を歩むことに...。
今度は「黒船」は現れません。(多分)
実際に権力を持つのは経営者なのか株主なのか、それともAIなのか。
B級SF映画の描く未来は、案外現実になるのかもしれません。
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